タロットカードというものの存在は知っていて、これは何気に相当数の日本人に該当すると思うが少年漫画『ジョジョの奇妙な冒険』で読み覚えたものである。
それで月に何度か通っている某サークルにて友達の友達というかたちで遊びにきた女性というのがなんとタロット使いの占い師であった。
タロットに限らず易者とリアルに言葉を交わすのはお初の経験だったのもあり、当初こちらはやや身構えるところもなくはなかったのであるが、少し話すうちに当の彼女はインチキくさいところなど皆無、自分を神秘的な人物に見せかけようとするところなどゼロパーセントの、まったくの常識人でありきわめて健全な女性であると判明したためあっというまに打ち解けた。
ただ、今にして思うとこういう相手の懐に巧みに飛びこんでみせる手腕こそも占い師の技量なのやも知れぬ。
確か中村うさぎが何かで「タロットというのは解釈の占いだがら当たる当たらぬは別にして占い師の思考が見えるのが面白い」と書いていたの読んだ記憶があるが、確かにその占い師の女性と共有した時間にはある種の思考遊戯的なコミュニケーションが発生していたと感じる。
肝心の占いの内容だが、なにぶん不意打ち的な状況であったためもあり、なにを相談したものか途方に暮れたのでこちらの健康についてたずねてみた。
カードをくしゃくしゃとテーブルで操作する彼女。
その合間、タロットの歴史などについていろいろ聞かされる。
こちらが知っていた有名なカード、いわゆる星(スター〇ラチナ)とか戦車(シル〇ーチャリオッツ)とかその他いろいろのカードはトランプでいう絵札的なもので、その他にもワンドとかカップとか補助的な札もあることを教えられる。
手順の詳細は失念したが、カードを何枚か選らばされる。
それらをさらにまた何回か置き換えたりシャッフルしたりする占い師。
結果がテーブルに並べられる。
しかし、面白いのはここで「あんたはこうこうだからいつ死ぬ」と一足飛びな結論に達しないところである。
札の並びを見ながら、「こうじゃないですか」「こういうことあったでしょ」と、こちらにさぐり(といってはやや言葉は悪いか知れないが)を入れてくる。
そして、そこで獲得した情報をもとに、「このカードは逆さになってるから逆の意味をもちます」「これは二重の意味があって~」という風に、なんというか一種の答えをすり合わせる作業を双方で頭をひねり工夫していく。
なるほどこれが中村うさぎのいうところの「解釈の占い」であるかと感心した。
それで思い出したが、日本では本来ならば精神カウンセラーが引き受けるところの役割を占い師たちがうけおっているという説を耳にしたことがあったが、なるほどと身をもって納得するところがあった。
ちなみに肝心のこっちの健康状態については、心臓に気をつけろとのこと也。